実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです
自社ビルの上にある、我が家。
便利さを重視してここに住んでいるので、他人を招く事は考えていなかった。
なのに、真穂だけはここに連れて来てしまった。
ホテルの特別室だった名残で、妙に寝室だけは豪華な造作だ。
寝室の真ん中に置いた大きなベッドを見ると、
冷房がよく効いているせいではなく、やけに寒々しい。
『真穂、何処にいるんだ…。』
あの日、抱き締めた肌が恋しい。
恋しい?
俺は今、何を想った?
『恋はしない』と決めているのに、真穂の温もりが恋しいだと?
あの夜、これでもかとばかりに抱き潰した真穂の身体。
身体中に鬱血の後をつけるほど、自分の物だという印を刻み付けた。
なのに…俺から離れようとしている?
何故だ?
『ああ、例の記事のせいか…。』
妹の夏子の友人と、パーティー会場でつい立ち話をしていたのだがそこを写真に撮られていた。
よくある事だと気にも留めていなかったのだが…。
あれから忙しくて時間が取れなったから、真穂は気にしたのかもしれない。
『だからといって、たかが噂ぐらいで俺が真穂に謝る必要もないし。』
『忙しかった』と言えば、真穂ならわかってくれる。
洸はその程度の軽い気持ちで、真穂からの連絡を待つ事にした。