実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです
隠されたハート
明石洸は、いつも苛立っているわけではない。
仕事に関しては冷静で的確な判断が出来ると思っているし、交友関係も幅広い。
決して、夏子が真穂に吹き込んだような、女たらしな訳でも無い。
男女ともに友人が多く、皆から慕われているだけだ。
どうしてだか、真穂には優しくなれない。彼女を見ると苦言を呈したくなるのだ。
何故、人の為に身を粉にして働くのか。
何故、自分の事より家族を優先するのか…。
洸には、真穂の行動や思考は理解出来ない事だらけなのだ。
真穂に初めて会った…というより見かけたのは、洸がアメリカから帰国して直ぐだった。
父が派手に浮気して、母が怒って京都の実家に帰ってしまった時。
まだ高校生だった洸は家にいるのが鬱陶しくて、親戚を頼ってアメリカに留学した。
意外にロスでの暮らしが洸には向いていたのか、大学もアメリカの学校を選んだ。
短期インターンシップを利用して外資で働いたりしたから、帰国したのは25になってからだった。
帰国して一番驚いたのは、
あれ程『運命の恋』だと盛り上がっていた父親と加瀬貴子が
父の浮気が元であっけなく別れていた事だ。
別居していた両親はとうとう離婚した。
父は、親子ほど年の離れた自分の秘書と再婚したのだ。
洸にはどうでもいい事だった。