実らない恋だとしても… あなたへの想いが溢れそうです
想いは何処へ


真穂は、母が住む青山のマンションへは時々訪れている。

用事を頼まれる事もあれば、急に会いたくなったからと弟妹を連れて行く事もある。


ここは青山でも静かな通りにあって、母も気に入っているのだろう。
世田谷の家より愛着がある様に思えてならない。

「おはようございま~す。」

真穂が合鍵で部屋に入ると、すでに米田が来ていた。

「米田さん、今日はよろしくお願いします。」
「こちらこそ、お願いね、真穂ちゃん。」


母のクローゼットは広い。
10畳は優にありそうな洋間に小ぶりな窓がある以外、ぐるりと壁面は収納スペースだ。

アクセサリー専用の棚もあれば、靴や帽子の棚もある。
キャスター付きのパイプハンガーもあるから膨大な衣装と小物だ。

それらを季節ごとに使い易い場所に動かしたり片付けたりするのが
米田と真穂の役目。


色や素材、昼用夜用をマナーに沿って選び、大体の並びを考える。
最終的には母の趣味も尊重しなければならない。

「今日、お母さんは?」

「早朝からロケに行ってる。昼過ぎには帰るわよ。」
「それまでに、大体は出来上がっておいた方がいいですね。」



< 69 / 202 >

この作品をシェア

pagetop