僕惚れ②『温泉へ行こう!』
*葵咲ばかり
 全て終わった後で、私は着替えを余儀なくされた。

(あれだけ色々しちゃったら……無理もないよね)

 思い出しただけで、顔から火が出そうになる。

(私、一人ではイヤとか……一緒にがイイ、とか言っちゃった気が……)

 は、恥ずかしすぎる……!

 ショーツなんて、そりゃあもう悲惨なことになっていたし、理人(りひと)は気をつけたつもりだったみたいだけど……スカートにも……その、べっとりと……。

 何が、とは敢えて言わない。と言うか言えないっ。

 さすがに、どこかで洗濯したいな……。

 一度熱を吐き出したからか……、はたまた私が彼の求めに全て応じたからか、理人は随分冷静になっていた。

「本ッ当、ごめんっ……!」

 そうしてことを終えた後、私の状態に気がついてただひたすらに謝ってくれて。

 その上で「とりあえず着替えて!」と車に押し込まれた。

 新幹線を降りてからこっち、一連のことを思うとそんな理人の変化に少しホッとする。

 情事のとき、ないと言っていた避妊具だって、理人の荷物の中にはちゃんと入っていたことも分かった。それも、割と取り出しやすいところに。それを彼が持って出てくれていたらスカートくらいは無事だったかもしれなかったのに。

(いくら何でも焦りすぎでしょ、理人のバカ……)

 とか色々考えてから、自分の思考の臆面のなさに驚いた。

(外で、しちゃったから……?)

 何だかリミッターが解除されたみたいに、さっきから随分大胆なことを思ってしまっている。

(ヤダ……)

 そのことに気がついたら、途端に恥ずかしくなってきて、私は自分の両頬をぺちぺち叩いた。
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