僕惚れ②『温泉へ行こう!』
 よくよく考えてみたら……私がさっき理人(りひと)に言ったことって……ある意味プロポーズだったんじゃ?……と気付いてしまったから。

 私が理人を誰かに奪われたくない気持ちと、理人が私に対して抱いている感情は恐らく同じもので……。

 そんなヤキモチ()きの私たちが、曲がりなりにもほんの少しでも安心するためには、(おおやけ)に認められた契約のようなものが必要なのかもしれない。


葵咲(きさき)、ちょっと待っててね」

 理人が私をギュッと抱きしめてから、名残(なごり)()しそうに身体を離しながらそう言った。

 私も、彼のぬくもりを手放すのが何となく淋しくて、彼が離れる瞬間、思わず手を伸ばしてしまう。

「……すぐだから」

 そんな私の様子ににこりと微笑むと、理人は部屋の片隅に置いた自分の荷物の横に(ひざまず)いた。
 私からは彼の背中しか見えなくて、理人が何をごそごそやっているのか良く分からなかったけれど……何となく、「あ、ゴムかな」とか思ってしまって……自分のその考えにドキッとして真っ赤になった。

(わ、私、何を期待しているのっ)

 つい今しがた、お風呂でそういうことをしたばかりだというのに。

 私は理人と一緒にいると、どんどん彼が欲しくて堪らなくなる。
 幼い頃から一緒にいたはずの彼なのに……。
 理人のことを知れば知るほど、彼を手放したくなくなってしまう。
 理人も、私と同じ気持ちなのかな。

 手に入れた途端、それを失いたくなくて守りに入ってしまうのは、人間の本能だろうか。
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