あなたに、キスのその先を。
健二(けんじ)とは、ちゃんと話をつけるご予定なんですよね?」

 いつの間にか自宅の前は通り過ぎていて――ひとつ先の角を曲がった所で車を停車なさった修太郎(しゅうたろう)さんが、前方を見据えたまま、静かな声音でそう聞いていらした。

 修太郎さんが、眼鏡を外してダッシュボードにお置きになられたのを見て、何故か心がざわざわとして彼から目が離せなくなる。

 発せられたお声は、静かで落ち着いていらしたけれど、どこかピリピリとした鋭さを(はら)んでいて。

 私は彼の雰囲気に気圧(けお)されてひるんでしまい、修太郎さんの質問にすぐ応えられなかった。

日織(ひおり)さん?」

 そのことに()れたように修太郎さんが私の名前をお呼びになって……。その声に責められているように感じた私は、修太郎さんのほうを見つめたまま固まってしまう。

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