あなたに、キスのその先を。
 と、カチャンという小さな金属音がした直後、結ばれていた右手をグイッと引き上げられて、助手席シートに押し付けられた。そのことに驚いて修太郎さんのほうを見たと同時に助手席(こちら)側へ身体を乗り出してこられた彼にあごをとらえられて――。

「――んんっ」
 何がなんだか分からないうちに、私は修太郎さんに唇をふさがれていた。

「……ふ、ぁっ」
 鼻から抜けるような吐息が漏れてからやっと、修太郎さんに噛み付くようなキスされているのだと、頭が追いついた。

 私に覆いかぶさるようにのし掛かる修太郎さんの体温に、私はこれが夢なんかではなく、現実なのだと思い知る。

 それとともに、ここが家の近くの路地だと思い出して。

「――はぁっ、んっ、……しゅ、たろぉさんっ、ヤメ……っ!」

 必死であごをとらえる右手から逃れて顔をそらしてから、彼の胸元へと封じられていない左手をつく。そうして修太郎さんの身体を押し戻そうと試みるけれど、全然びくともしなくて――。
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