あなたに、キスのその先を。
 とりあえず食事をしながら話しましょう、ということになって。

 私は目の前のご馳走に視線を転じる。

 パンもスープも鴨肉もみんな美味しそうで。
 ついでに言うと、よく冷えた炭酸水もとても美味しかった。

「あ、あの、修太郎(しゅうたろう)さん。グラス……」

 そこでふとグラスが手許にないのを思い出した私は、お水が飲みたいです、と先程取り上げられたままのグラスを指差す。修太郎さんは私の言葉を受けて「あ」という顔をなさった。

「ごめんなさい」

 私にグラスを返してくださいながら、申し訳なさそうにしゅんとなさるのがとても愛しくて。
 愛しいと思ってもいいのだと……その気持ちを隠さなくてもいいのだと言われたことがとても嬉しくて。
 私は思わず笑みを浮かべてしまった。

日織(ひおり)さん?」

 修太郎さんが私の表情の変化を目ざとくみつけていらしたので、私は彼のほうへ唇を寄せて耳打ちをする。

 私の言葉をお聞きになった修太郎さんが、照れたように微笑まれてから、「僕も大好きです」と返してくださった。
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