あなたに、キスのその先を。
***

「ん……」

 無意識に寝返りを打ったところで、「トイレ……」とつぶやいて、私は自分のその声に目を覚ました。

 塚田(つかだ)さんに寄り掛かって目を閉じていたときには、とてもじゃないけれどドキドキして眠れないと思っていた。それなのに、私は結局いつの間にか意識を手放してしまったみたい。

 ほんのりと薄暗い部屋の中で、私は見知らぬベッドに寝かされていた。身体には柔らかな布団もかけられていて。
 寝具全体から香る大好きな塚田さんと似た香りに、私は彼に包まれているような錯覚を覚えて眠りこんでいたらしい。

 でも、いま視線を巡らせて見ても、傍に塚田さんの姿はなくて。

 それに気付いたと同時に急に不安になった私は、慌てて身体を起こした。途端、くらくらとした眩暈(めまい)に襲われて、思わずベッドに手をついて身体を支える。

「……塚田(つから)、しゃん?」

 恐る恐るつぶやいてみたけれど、部屋の中には私以外の気配はないみたいだった。
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