あなたに、キスのその先を。
 (おぼ)ろな明るさの中、耳を澄ましてみるけれど答えが返る気配はなくて、不安がどんどん増してくる。

 それと同時に、トイレに行きたいと言う思いまでもが切実になってきて……迷った末に私は、ベッドから降りてみることにした。

 そっと床に足を下ろすと、ストッキング越しに冷たいフローリングの感触が伝わってきた。その感触を確かめながら、私は恐る恐る立ち上がる。

「ひゃっ」

 途端、足元がふわふわして、私はベッドに尻餅をついて弾んでしまった。
 スプリングに押しつ戻しつされるその揺れに、未だお酒でハッキリしない頭がくらくらする。


 と、部屋の一画が、切り取られたように明るくなって、まぶしさに目を細めたと同時に塚田(つかだ)さんが慌てたように走り寄っていらっしゃるのが見えた。
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