あなたに、キスのその先を。
「大丈夫ですか? どこも打ったりしてないですか?」

「は、はい、(らい)丈夫(じょぶ)なのれす……。その、(わらち)……お手洗(てあら)いに行きらくれ、それれ……」

 ゴニョゴニョ……。

 塚田(つかだ)さんの姿が見えたことに安堵(あんど)したと同時に、寝室らしき部屋で二人きりなことに気がついた私は、今更ながらドキドキしてしまって語尾が尻すぼみになる。

 しかもテンパって大好きな塚田さんにトイレに行きたいとか恥ずかしい告白までしてしまったし……!

(うわぁーん、私のバカっ! 今すぐ消えてしまいたいのですっ……)

 そんなあれやこれやが(あい)まって、()(たま)れなくなった私は、慌てて彼から視線をそらしてうつむいた。

 下を向いたまま、所在なく手をゴソゴソと組んだり外したり……腕時計をソワソワと触ってみたりを繰り返しながら。

 それでも、もうひとつだけ。

 どうしても気になったことがあった私は、視線を合わせられないままに塚田さんに問いかける。
< 52 / 358 >

この作品をシェア

pagetop