ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「行ってらっしゃい。気をつけて」

 これ以上引き留めてはいけない。笑顔で彼の腕をポンッと叩いて出発を促すと、蒼さんはすぐに気持ちを切り替えて家を飛び出していった。

 ドアが閉まる音が切なさを煽り、息苦しくなって寝室に駆け込む。視界に飛び込んできた姿に、胸を窮屈にさせていたものがストンッと落ちる感じがした。

「どういう体勢……」

 猫のポーズと例えればいいのか、お尻を突き上げた謎の体勢で爆睡している蒼斗の姿に、ぽっかり空いた穴が温かな感情で埋まっていく。

 ほんと、おかしい。

 笑いを堪えながら寝相が変わる前に急いで写真を撮って、メッセージアプリを開いたところで指の動きを止める。

 さすがに今送ったら空気を読めていない。蒼斗の可愛い写真は明日見せよう。

 大好きな息子の寝相を共有できる存在がいるのだから、寂しがる必要はどこにもないのだとスマートフォンを胸に抱いて深呼吸をした。
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