ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 強く押しあてられた唇が徐々に優しさを滲ませる。

 やわらかさと熱がじわじわと伝わり、心臓をギュッと握られたような甘い痛みを覚えた。

 ゆっくりと離れた口は、肌に吐息がかかる距離で囁く。

「頼むから、愛想を尽かさないでくれ」

 斜め上の発言をされ、甘い気分が霧散して頭のなかが疑問符でいっぱいになる。

 どうしてその思考になるの? それにいきなりキスなんて……。

「俺は、みちると蒼斗を愛している」

「……うん」

 なんとか返事をすると、ふう、という吐息が肌の上を滑っていく。甘い蜜をかけられたように全身がゾクッと震えた。

「またすぐに時間を作るから」

 余裕のない声音に首を横に振る。

「無理しないで」

 蒼さんはなにか言いたげにしたが、またポケットのなかから響いてきた振動音に口をつぐむ。
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