ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 
 別れ際、呆気ないほど蒼斗は手を振って私のもとから去っていった。

 離れるのはこれが初めてだったので、私の方が寂しくて心にぽっかり穴が空いたかのよう。

「そんな顔をされると、引き離した俺としては複雑なんだが」

 困り顔の蒼さんにそう言われても、寂しいものは寂しい。

「こうやってどんどん私の手から離れていくんだよね。成長を喜ばないといけないよね」

「無理して喜ばなくていいんじゃないか」

 同調してもらえてありがたい。「そうだよね」とつぶやいて、気持ちを切り替えようと深呼吸をした。

「それで、どこに向かっているの?」

 来た道とは違う方角へ歩み始めた蒼さんの横顔を見上げる。

「部屋を取ってあるから、今日はここに泊まる」

「今日!? なにも持ってきてないよ!?」

 素っ頓狂な声を上げてしまい、我に返って辺りを見回した。幸いにも近くに人はおらず、遠くの人がこちらを振り向く気配もない。

「なにもいらない。みちるだけいれば」

「意味がわからないよ……」

 開いた口が塞がらないまま、あれよあれよというまに取ってあるという部屋まで連れていかれた。
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