ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「なかへ戻ろう。雨が強くなってきた」

「すみません。ありがとうございます」

 大きい傘だが、それでも大人ふたりが濡れないようにするためには身体を寄せ合わないといけない。

 思い違いかもしれないけれど、触れ合いそうな距離にある大槻先生の身体から体温が伝わって温かさを感じた。

 建物のなかに戻るとすぐに傘を畳んだ大槻先生は腕時計を見る。

「俺はもう戻らないといけないけど、金森さんはこのまま帰る?」

「はい。帰ります」

 それなら、と大槻先生は手に持っていた傘を私の方へ差し出した。

「ストックしていた傘だから、これで帰って。返さなくていいよ」

「コンビニで買えますので……」

 申し訳なさから首を横に振って断ったのだが、私をジッと見つめる彼は傘を引っ込めようとしない。

「ここに傘があるんだから、これを使えばいいよ」

 念押しされて、好意を無下にするのもどうかと思い両手を伸ばして傘を受け取る。

「なにからなにまで、ありがとうございます」

「そんなたいしたことはしていない」

 クスクスと笑われて、嬉しいような恥ずかしいような、なんとも言えない感情が胸をくすぐる。

 別れの挨拶をして、互いに背を向けて歩き出す。だけどすぐに振り返って彼の姿を確認したい衝動が襲ってきて、胸の奥が甘くざわめいた。

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