ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 店の外に出て私たちは自然と向かい合う。

「金森さんもテイクアウトにしたんだね。あのベンチで食べるの?」

「そのつもりです。今日は天気もいいし」

「そっか」と、うなずいたあと大槻先生は小さく首を傾げた。

「それって、俺もお邪魔してもいい?」

「一緒にベンチで食べるということですか?」

「そう。迷惑かな?」

 予想外の提案に心臓が大騒ぎを始め、ドクンドクンと鼓動する音を聞きながら「迷惑じゃないです。大丈夫です」と答える。

 返事を聞いた大槻先生はなにがそんなに嬉しいのかと問いたくなるような、やわらかな笑みを浮かべた。

 少しぎこちなさが漂う私たちは、移動しながらぽつぽつと会話をする。

「今日はゆっくり食事ができるんですね」

 何気なく問うと、大槻先生はちょっと困った顔を作る。

「三十分くらいは」

「え! まったく時間内ですね。急がないと」

 私の歩幅に合わせて歩いてくれていたので慌てて早歩きする。すると「待って」と苦笑交じりに言われ、再び歩調を緩めた。

「その靴で早歩きしたら転ぶよ」

 指摘された靴は、凶器になりそうなほど先端が細いピンヒール。病院へ行くのだからと、今日は手持ちのなかで一番ヒールの低いものを選んだが、それでも五センチはある。

 毎日このような靴を履いているので私としては大丈夫だと思っているのだが、他人から見たら危なっかしいのかもしれない。
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