ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 不意にバッグのなかから低い振動音がして、音を鳴らしているスマートフォンを取り出す。母親のものだ。

 三日前から毎日かかってきている電話番号を見て眉間に皺を寄せた。

「お母さんの?」

 画面を見つめたまま応答しようとしない私に、大槻先生は不思議そうな顔をする。

「そうです」

「大事な用件かもしれないし、出た方がいいんじゃないか?」

「相手は誰かわかっているんです」

 他人からしたらなんの変哲もない数字の並びだけれど、下四桁が私の誕生日になっている。今も昔と変わらない番号を使用している電話の発信元は、私の父親だ。

「父親です。母とは、私が高校三年生のときに離婚しました。それから一度も連絡を取っていないはずなんですけど……今さらなんの用だろう」

 自分の声が硬く冷たくなっているのがわかったが、父親が関わるとどうしても拒絶反応が出る。

「お母さんが個人的に連絡を取っていたという可能性は?」

「ないと思うんですけど……父は、母にひどいことをしましたから。母も、もう二度と会わないと言っていました」

 手のなかで振動し続けていたスマートフォンがピタリと静かになった。ふう、と重苦しい息を吐いて、嫌な音を立てている心臓を落ち着かせる。
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