ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 その後、今日も静かに眠る母親を見舞ってから日が明るいうちに帰宅した。

 母親は離婚後今のアパートに移ったのだが、やはり一緒に暮らした方がいい気がする。

 アパートは交通不便地域にあり、車を運転する母親にはとくに不便はなかったが、主にバスと電車で行動する私には障りがあった。

 だから就職を機に、鉄道駅の最寄りマンションに引っ越したのだけれど。

 このままずっと母親のアパートを私が維持していくのは、現実的に考えて無理だし……。

 1LDKの小さなリビングにひとりでいたら、また抗いがたい不安にとりつかれる。

 胸がざわざわとして、助けを求めるようにスマートフォンに手を伸ばした。

 電話したら迷惑だよね。でも、無性にあの優しい声が聞きたい。

 小刻みに震える指先で通話ボタンを押す。忙しい人だし電話に出ない可能性の方が高い。むしろこのまま繋がらない方がいいのかも、と後ろ向きの考えがよぎったときコール音が途絶えた。

『はい、大槻です』

 心臓が大きく跳ねる。
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