ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 
 楽しい日課ができてから五日目、母親が意識を取り戻した。倒れてから実に十五日後のことだった。

 大槻先生から自分の身になにが起きたのか説明を受けた母親は、すぐに事態を理解して、早く元気にならないといけないと困ったように微笑んだ。

 そんな娘に心配をかけないようにと強がっている母親ではあったが、左半身に残った麻痺のせいで食事や会話、歩行に支障が出ると険しい表情を浮かべるときもあった。

 私も一緒に暗い顔をしていてはいけないと、病室にいるあいだは笑顔を絶やさないよう心掛けたが、ひとりきりになると思い悩む時間は以前と比べて格段に増えた。

 正直なところ、麻痺を負った人間の介助がここまで大変だとは思っていなかったのだ。

 抜け出せない迷路に迷い込んだように、毎日どうにもならない葛藤を抱いていた私にとって、大槻先生との電話は唯一の癒しの時間になっていた。

 母親が目覚めてから八日目の六月七日、金曜日。

 いつものように見舞いを終えて帰宅し、夕食とシャワーを済ませてようやくひと息ついているところへ電話がかかってきた。
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