ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
『こんばんは。今いいかな?』

「こんばんは。大丈夫ですよ」

 反射的に時計を見やる。五分だけ、という習慣ができてからいつの間にか時刻を確認する癖がついた。

「今日、母が食事中に口のなかを噛んで、血まみれになったと言っていたんですけど……」

『報告は受けているよ。舌に麻痺があるとそういうこともあるね』

「そうですか……」

 この八日間、電話の内容は母親についてばかり。急に先生と患者の娘という立ち位置が浮き彫りになった気がして少し寂しさがある。

 しかし主治医であり信頼を置いている先生に聞きたいことは山ほどあり、どうしても質問を重ねてしまう。

『みちるちゃん無理してない? 自分の生活だってあるから、来られない日があるのはあたり前だし、できる範囲でフォローしてもらえればいいんだよ』

 大槻先生は離婚後も父親の名字を名乗る母親を「金森さん」と呼ぶので、差別化を図るために「みちるちゃん」と呼ぶようになった。

 大槻先生の言葉にすぐ返事ができない。

 気丈に振る舞うのは得意なはずなのに、彼を前にすると不思議と甘えたくなってしまう。
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