ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 言い淀んだ私の心情を察してくれたのか、大槻先生はさりげなく話題を変えた。

『スタッフたちがみちるちゃんのことを褒めていたよ。どんなときでもお母さんに優しい声掛けをしていて、みちるちゃんの笑顔のおかげで場の雰囲気が明るくなるって』

「ありがとうございます。よくしていただいているのはこちらなのに、なんだか恐縮しちゃいますね」

『俺もそう思う。みちるちゃんはいつも頑張っているよ』

 苦笑する私の声を打ち消すように、大槻先生は穏やかでいてハッキリとした口調で言った。

 誰かに褒められたくて元気な振りをしているわけではない。だけどこうして労われると、自分の努力を見ていてくれる人はいるのだと救われる。

『弱音は俺の前で吐けばいいよ。お母さんにチクったりしないから』

 クスクスと笑う温かな声が耳に心地よく、胸から熱いものが込み上げて目の奥が熱くなった。

 優しい人だな……。

「ありがとうございます」

『それで……ああ、もう五分経つか』

 なにかを言いかけた大槻先生が、時間に気づいて言葉を切る。

 幸せな時間というのはどうしてこうも過ぎるのが早いのだろう。名残惜しさを感じて無意識に口から溜め息がこぼれ落ちていた。
< 41 / 193 >

この作品をシェア

pagetop