ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 食事に誘ってもらえた喜びと、不相応だと感じる息苦しさ、そしていつかの別れを想像して切なくなり、様々な感情がないまぜになって心が落ち着かない。

 そわそわしながら深呼吸を繰り返している私の前に、大槻先生は予定時刻ちょうどに姿を現した。

 少し皺の入ったワイシャツ姿なのを見る限り、仕事を抜け出してきたのだと推測する。

「待たせてすまない」

 席に着くなり頭を下げる大槻先生に、とんでもないと両手を振った。

「楽しみで、私が勝手に早く来ただけですから」

「楽しみにしてくれていて嬉しいよ」

 ついて出た本音に爽やかな笑みで返されて、顔を合わせたばかりだというのに体温が上昇しすぎて汗をかきはじめてしまった。

 これは頃合いをみて化粧直しに席を立った方がよさそうだ。

 私は一日限定十二食のキッシュプレート、大槻先生は日替わりランチセットを注文した。

「いろいろ考えてみたけど、みちるちゃんは小食みたいだし、こういう店の方がいいかなって思ったんだ」

「気を遣わせてすみません。本当はよく食べる方なんですけど、最近はちょっと食欲が落ちているんです」

 申し訳なくなって目を伏せると、大槻先生はテーブルに両肘をついて相槌を打つ。
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