ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「先生はこれからまた勤務されるんですよね」

 もう十四時半を回っている。そろそろ病院へ移動しなければいけない。

「そうだけど……その、先生っていうのやめないか?」

 恋人同士になったからというのはわかるけれど、さすがに早急で目をぱちぱちさせた。

「いや、悪い。徐々に変えていけばいいか」

 私が口を開く前に、大槻先生は自分の発言を打ち消そうとする。言動に余裕のなさが垣間見えて、そんな彼を可愛いなと思った。

「蒼さん、と呼んでいいですか?」

 遠慮がちに尋ねると、彼は目を弓なりに細めてうなずいた。

「ありがとう」

 名前で呼んだだけで親密さがグッと増した気がして、トクトクと小気味よく鼓動が鳴る。

「離れがたいな」

 蒼さんが腕時計をかざしながら息をつく。

「明日も病院へ行くのなら、そのときに会えるか」

「そうですね。お見舞いと家のことをやって、あとはスーパーに買い物に行くくらいです」

 多忙な蒼さんに比べてなんと平和な休日なのだろうか。母親が入院するまでは友人と遊びに出かけたり、エステなどの美容関連で予定はそれなりに埋まっていたのだが、今は極力用事を入れないようにしている。

「それなら今夜うちに泊まっていかないか?」

「えっ……今夜ですか?」

 先ほどから驚いてばかりだ。胸がドキドキと鳴って騒がしい。
< 50 / 193 >

この作品をシェア

pagetop