ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
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 交際初日に身体を交わらせたので、もしかしたら遊ばれたのではないかと考えた瞬間もあった。

 しかしそんな心配は杞憂に終わり、私たちのお付き合いはいたって順調で、もうすぐ一ヶ月が経とうとしている。

 七月を迎えた青空からは強い日差しが降り注ぎ、もう日向ぼっこをする時期は過ぎ去ったのだと肌で感じた。

 今日は母親が常盤総合病院で過ごす最後の日だ。今後は回復期リハビリテーション病院に転院して、自宅に戻ってもひとりで生活できるようになるまで訓練することになっている。

 無事にここまで回復して本当によかった。あとは転院後の母親の精神面を支えつつ、退院後の生活について考えていく段階まできている。

 手をかざしながら空を仰ぎ、そろそろ場所を移そうかと思案しているときだった。

 女性の医師と看護師が、車椅子に乗った患者と一緒に建物から出てくる。

 ここは患者の散歩に使われているようで、こういう光景を目にするのは初めてではない。

 女性医師は常盤総合病院の院長の娘で、名前は常盤莉々沙(りりさ)さんという。彼女の指導係である蒼さんから教えてもらった。

 私の存在に気づいた看護師と視線が交わったので会釈をすると、患者とふたり挨拶を返してくれた。

 彼らと距離感はあるものの、周りが静かなので会話が聞こえる。
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