ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
「ええ……そうかなあ。じゃあ、お見合いの話受けてみようかな……なんてね」

 謙遜しながらも、まんざらでもない口調で莉々沙先生はおどけて笑う。

 背中に冷たいものが走り抜けていく感じがして、陽射しは暑いのに寒気がしてぶるっと身体を震わせた。

 三人はひとしきり笑ったあと、方向転換をして再び建物に向かう。ハッとして視線を外そうとしたところで、不意に莉々沙先生と目が合ってしまった。

 しかし彼女は私の存在なんてなかったかのように、ついと顔を逸らしてなんのリアクションもせず患者との会話に戻る。

 蒼さんと莉々沙先生のふたりと病棟ですれ違うとき、蒼さんは挨拶を返してくれるけれど莉々沙先生はいつも無反応だった。

 だからクールな人だと思っていたのに、三人の様子をからしてそういうわけでもなさそうだ。

 私が嫌われているとか? でも心当たりはないし、もし莉々沙先生が蒼さんに好意を抱いていたとしても、私たちが交際していることを彼女は知らないはず。
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