ママになっても、極上ドクターから独占愛で迫られています
 心がざわざわとして落ち着かず、三人の姿が建物のなかに消えても身動きひとつ取れなかった。

 お見合いの話が事実だとして、仮にふたりが結婚したら蒼さんは婿として次期院長になるの? それってすごいことだよね……。

 莉々沙先生は自分より相応しい人がいるって話していたけれど、少なくとも私より彼女の方が蒼さんの結婚相手に似つかわしい。

 蒼さんはどうするつもりなのだろう。恋愛と結婚は違うと言うし、今は私と交際していても、将来的には莉々沙先生と結婚したいと考えているのだろうか。

 直接聞きたいのはもちろんだが、まだ一ヶ月しか交際していない私がどこまで突っ込んでいいのか判断がつかない。

 莉々沙先生の気持ちを身勝手に蒼さんに伝えるのも気が引ける。

 気持ちが沈んだまま見舞いを終えて母親のアパートまでやって来ると、玄関の前に見知らぬ男性が立っていて誰だろうと眉をひそめる。

 三十代半ばくらいだろうか。半袖があたり前になった初夏だというのに暑苦しいスーツを着ていて、右の指には電子タバコを挟んでいる。

「……どちらさまでしょうか」

 恐る恐る近づいて声をかけると、男性はすぐに電子タバコを片付けて微笑んだ。
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