【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 今ならハッキリわかる。
 2年前のあの夜、癒されたのは俺のほうだ。

 菜月に髪を撫でられた感覚と、背中を叩く一定のリズム。耳に心地よく響く柔らかい歌声を今でもハッキリと覚えている。

 あんなふうに接してくれた女性は初めてで、あんなに安心して眠れたのもいつぶりかわからないくらいで。

 彼女に抱きしめられ、心を蕩けさせられて……その時にはとっくに落ちていたんだろう。


 2年ぶりに子守唄を歌ってもらい、幼い子供の頃を思い出した。
 固く閉じていた蓋が開いて感情が溢れ出すと、知らずに涙がこぼれだす。
 
 そんな俺のことを彼女は笑ったり茶化したりしなかった。
 そのままただ背中を優しく叩き、歌い続けてくれる。

 女とセックス抜きで一晩過ごすなんて初めてだ。
 下半身を勃たせたままの生殺し状態。溜まっているはずなのに、なぜか心は軽くなっていた。

 夢うつつになりながら自覚した。

『ああ、俺は菜月のことが好きだ……』と。

 しかし同時に脳内でパニックが起きる。

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