【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
今日の食事会にこの店を選んだのはミヤちゃんだ。
『もしかしたら臣海さんに会えるかもしれないでしょ?』
そう言われて『いやいや、待ってろって言われてるんだし』と言いつつ了解したのは、やはり私もチラリとでも彼の姿を見れないかと期待していたから。
――まあ、そんなに上手くいくはずないけれど。
窓際の私たちのテーブルからは道行く人や道路の車がよく見えるけれど、もちろん臣海さんが前を横切るなどという偶然は起こっていない。
「とにかく声は控えめで!」
私が慌ててお願いすると、ミヤちゃんはオードブルを盛り合わせたタパスの皿からオリーブをフォークで突き刺して、不満げに口に放り込んだ。
「大声で文句を言いたくもなるわよ。っていうか、ここは菜月が怒る場面じゃないの?」
いきなり1週間も連絡をよこさないとは何ごとだ。
しばらくとはいつまでなのだ。信じろと言うなら信じられるよう誠意を見せるべき……。
そうミヤちゃんはまくし立てる。
「長年連れ添った夫婦ならともかく付き合いたての恋人だよ? 電話の一本も寄越さないってどういうこと!?」
「それは……」
私自身にもわからないので答えようが無く、言葉を詰まらせた。