【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 環妃さんを伴ってホテルの展望レストランの個室に入ると、フレンチのフルコースを食べながら取り留めのない会話を続ける。

 メインディッシュが終わってデザートを待っている間に、タイミングを見計らって本題を切り出した。

「環妃さん、突然のことで申し訳ないのですが……あなたとの婚約を解消させていただきたいのです」

「……嫌です」

 プライドの高い彼女であれば、こちらからの申し出に腹を立てて席を立つのでは……そうしてくれれば話が早いと内心思っていた俺は、理由も聞かずに速攻で拒否されて逆に驚いてしまった。

 間宮環妃は生粋のお嬢様だ。

 彼女の父親である間宮公造(こうぞう)氏は沖縄では名の知れた地主で不動産会社社長をしている。

 間宮氏は娘を溺愛しており、彼女に会社の受付嬢という肩書きを与えつつ、実際には好き勝手にさせていた。

 会社は長男に継がせることが決まっているため、環妃さんが経営について学ぶ必要もない。

 彼女がしょっちゅう上京しては俺に会いに来ることができるのも、そういう恵まれた環境下にあるからだ。

 まあ、そのたびにホテルの部屋を用意するのはこちらなのだが。

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