【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
1ヶ月半前の帰国直後、羽田空港まで迎えにきていた間宮環妃とともに車に乗り込んだ俺は、そのまま彼女が泊まっているKUONホテル新宿に向かうよう鮎川に告げた。
「あら、荷物があるのに臣海さんのマンションに行かないの?」
「いや、食事をしましょう」
彼女が以前から俺のマンションに来たがっているのはわかっていたが、気づかぬふりをして避け続けている。
婚約者であれば相手の部屋に行ってみたいと思うのは自然なことだろう。
以前の俺だったら彼女を利用する手段として迷わず部屋に連れ込んでいたと思う。
さりげなくホテルの部屋に誘われたこともある。
しかしそのたびに、「あなたに手を出したりしたら千春さんやあなたのお父上に叱られてしまいますから」などと言ってはぐらかしてきた。
たった一晩会っただけの女が妙に気になっていた俺は、環妃さんとその先に進むことを躊躇していたのだ。
遊び相手であれば後腐れないが、婚約者ともなると簡単に後戻りができなくなる。
そう思っていた時点で、すでに俺の心に菜月が居座っていたのだろう。
そして今後も環妃さんが俺の部屋に入ることはない。
俺にはすでに愛する女性ができてしまったから。