【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

『もう俺、小5だぜ』

 小さな子供みたいにあやされると、俺は皮肉げに口角を上げて照れ隠しをする。
 それでも母親とそんなふうに過ごす時間は嫌いじゃなくて、ウトウトしながら呟くのだ。

『いつか俺が母さんをニューヨークに連れて行くよ。だから早く元気になって』
『そうね、臣海と一緒にパパとの思い出の場所に行けたら楽しいでしょうね』

 トン、トン、トン……と背中で繰り返されるリズムで眠りに落ちる瞬間、俺は考える。

 ――だったらどうして父さんは俺たちを捨てたんだよ。

 けれどもそれは結局最後まで、母に聞くことはできなかった。
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