【6/15番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
一番恐ろしいのが母親の闘病中の記憶だ。
あんなに美しかった母が徐々に痩せ細って骨と皮だけの姿となり、涙を流しながらトイレで吐いている。
しまいには自力で動けなくなりオムツ生活になった。
亡くなったのは病院の病室だったが、小学校に行っていた俺は母の死に目に会えなかった。
いや、一応は間に合ったのか。学校まで迎えに来た祖母と俺が一緒に病室に入ったとき、母は心臓マッサージをされていて、医師の両手で胸を押されるたびに身体がピョコピョコ跳ねていて。
けれどあの身体は抜け殻だった。あの時すでに母の魂は天に昇っていたのだと思う。
前日の消灯間際、もう尽くす手も無くなって痛み止めでうつらうつらしている母が俺の手を握り、『ごめんね』とか細く呟いた。
――母さん、謝らないで。母さんは何も悪いことをしていないじゃないか。悪いのは……悪いのは、生まれてきた俺じゃないか!