【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

『――皆さま、NYジョンエフケネディ国際空港に着陸いたしました。只今の時刻は午前8時57分でございます。飛行機が完全に止まりこちらからご案内致しますまで、お席にお座りのままお待ちください。座席の上の物入れは蓋を開ける際……』


 チーフパーサーのアナウンスが入り、客席が移動の準備でざわめき始める。

 機体(シップ)が停まり私がドア近くに立ってお見送りしていると、前方からキャリーケースを引いた久遠様が歩いてきた。

「ありがとうございました。行ってらっしゃいませ」

 お辞儀をする私の手に、彼が何かを握らせた。
 頭を下げたままそっと見ると、コースターに電話番号と共に1700という謎の数字が書かれている。
 
 驚いて顔を上げた私の耳元に、彼は口を寄せた。

「今夜7時、思い出のホテルの1700号室に」

 艶のあるバリトンボイスが鼓膜を震わせると、覚えていないはずのあの夜が甦るようで、下半身が震えだす。

 何と答えればいいのかわからず立ち尽くす私に、彼は「待ってるから」と不敵な笑みを浮かべたのだった。

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