【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜

 笑顔の輪の中心に私が押し出されると、高級スーツでビシッとキメた臣海さんが、席から離れて目の前に立つ。
 私を真っすぐに見つめると、真剣な表情で口を開いた。

「菜月、君と出会えたことが奇跡なら、好きになってもらえたことも奇跡だと思う。けれどもう一つ、最高の奇跡を叶えてくれないか?」

 臣海さんはスッと片膝をつき、蓋を開けた紺のケースを差し出した。

「北見菜月さん……どうか俺と結婚してください」

 皆が固唾(かたず)をのんで見守る中、私は彼の手からゆっくりとケースを受け取る。

「はい、喜んで……よろしくお願いします」

 ワッと皆が沸きかえり、自然に拍手が起きた。

「菜月、おめでとう!」

 ミヤちゃんに抱きつかれ、視界が滲む。

「ミヤちゃんありがとう……皆さんも、ありがとうございます」

「北見さん、まだ続きがあるでしょ、ほら」

 チーフパーサーにそう言われ顔を戻すと、臣海さんが私の手から指輪のケースを取って、中のダイヤモンドリングを私の薬指に嵌めてくれた。
 もう一度拍手が起こり、彼に抱きしめられて。

「これで菜月は俺のものだな」

 甘く耳元で囁かれ、私はそっとうなずいた。


 地上1万メートルの空の上で、私は今日、彼のものになりました。



Fin


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