【2/4 番外編追加】一夜の恋じゃ終われない 〜冷徹ホテル王の甘い執着〜
 美月にはフード付きのカバーオールを着せて完全防備させている。
 まだ生後1ヶ月にも満たない新生児に風邪を引かせたくはない。

 私は美月のモコモコの身体を抱きしめると、冷気の吹き込むベランダから室内に数歩下がり、出入り口近くを臣海さんに譲った。

「鬼は外! 福は内!」

 艶のあるバリトンボイスが響き渡る。
 バラバラと勢いよく豆を巻くその表情は、なんだかとても楽しげだ。

 臣海さんの豆まきの思い出は、小4の2月で途切れているという。
 それから間もなく母親が病気になり、それどころではなくなってしまったのだそうだ。

 彼からそれを聞いていた私は、だったらちゃんと節分の行事をしようと考えた。
 彼の途切れた思い出を、今年からまた再開するのだ。臣海さんと、美月と私と3人で。

「ううっ、寒い! 臣海さん、もうドアを閉めようよ」
「そうだな、俺が片付けておくから、美月と奥に行っておいてくれ」

 そう言って彼がほうきと塵取りで手早く掃除を始める。
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