一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
駐輪場に着くとすでにお兄ちゃんは待っていて、私に手を振り合図をしてきた。

「お兄ちゃん!目立つことはやめてって言っておいたでしょ?お兄ちゃんは目立つんだからね」

「そんなに目立たないよ。みんな白衣きてるんだから分かんないって。それに由那に会いたかったんだよぉ」

「もーっ!アメリカ帰りのドクターって私の耳にも入ってくるぐらいには今日一日で噂になってたよ」

「そうか?光栄だな。さ、由那は何食べたい?」

お兄ちゃんの無自覚さに呆れるけど、そこもまたお兄ちゃんのいいところ。

「お好み焼きとかどう?お兄ちゃん久しぶりに食べたくない?」

「いいじゃん!由那わかってるね。」

「自転車置いて行こうかな。お好み焼きならビールだよね」

「いいね。何なら明日の朝は迎えに行ってやるよ」

「またー!目立つことしないで」

ははは、と笑いながら言うから本気ではないのだろう。
でも「お願い」と言ったら本気になってしまうと思う。
呆れながらもお兄ちゃんの優しさを思うだけで苦笑いをしてしまった。

お兄ちゃんとビールを飲み、いい気持ちになり家へ帰った。
お兄ちゃんに甘やかされ、世話を焼かれ、ちょっとだけ疲れていた私の心に優しさが染み渡った。
兄妹っていいな……。
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