一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
***
驚いたことに夏休みが重なっていた。
それを聞いたら俺は由那ちゃんを誘わずにはいられず、考えるよりも先に誘っていた。
朝からちょっとだけ気持ちが上がっているのがわかる。
顔がつい綻んでしまう。
午前中外来の診察が終わるとすぐにオペに入った。
やっとのことで少し落ち着いたところでスマホを見ると由那ちゃんからのメッセージが届いていた。
明日明後日なら大丈夫、と。
どうしようかな。
どこに行こうかな。
ゴールデンウィークのこともあり、なんとなくあれから地元のこじんましたお店に行くことが多かった。
俺がなんてフォローしようとも、由那ちゃんにとっては俺の隣にいることで居心地の悪さを感じてしまったことは間違いない。
でも俺は由那ちゃんともっと過ごしたい。
だからこそ由那ちゃんがもう2度と居心地の悪さを感じずに素で自分を曝け出してくれるように努めていた。
明日明後日は出来れば近所でなくどこかに行きたい。
せっかくの夏休みを一緒に楽しく過ごしたい。
由那ちゃんのことはもうとっくに友達以上の気持ちになっている。
けれど前のように避けられないよう、慎重になってしまう。
由那ちゃんは控えめな子だから俺のことを知ったら逃げてしまうのではないかと思った。
俺がこの病院に医師で跡取りだと知ったら、と思うと気が重い。
いつまでも言わないわけには行かないが、なんとなく仕事も誤魔化したままでいる自分が辛くなってきた。
もっと俺のことを知ってほしいと思った。
反対に由那ちゃんのことをこれまで以上に知りたくなった。
明日、明後日のことを考えると楽しみになってきた。
でもどこに行こうかと悩んでしまう。
病棟の回診も終わり、帰り間際に同僚の健介と帰りが一緒になった。
一緒に夕飯を食べに行くことになり連れ立って近くの居酒屋へ向かった。
まだ来たばかりの健介だが年が同じこともありすぐに打ち解けることができた。
健介はアメリカの大学をでて、さらにはそのまま病院でも勤務をし技術を磨いてきた優秀な外科医。
ユーモアがあり、人の心を掴むのが上手い彼だがとてもパワフルでオペを何件もこなすほどの体力を持ち合わせており見習うべきところはたくさんあった。
ただ、周囲からは残念なお兄さんと呼ばれていた。
妹を溺愛してるらしく10年ぶりに日本に戻ったこともありわざわざ妹が働いているという理由だけでうちで働くことを決めたらしい。
妹は兄を邪険にしているらしいが、それにもめげず暇さえあれば仕事を見に行ってるらしい。
最近はそんな彼の行動も周囲からは温かい目で見られ黙認されているよう。
妹はそんなに可愛い存在なのか?
俺には弟しかいないからわからない。
「なぁ、明日から夏休みなんだけど……どこに行こうか悩んでるんだ」
「誰と行くんだよ」
「うん、まぁ。気になってる子、かな。ちょっと年下だけどしっかりしてる可愛い子だよ」
「羨ましいな。年下なら定番の遊園地とかどうだ?うちの妹なら夢の国なら間違いなく喜ぶな。まだ暑いし水族館とかもいいかもしれないな」
「なるほどな」
「冬哉、お前モテるんだから悩むことはないだろ。30までデートなんてたくさんしてきただろ」
「うーん。ま、そこそこは。でも今回は違うんだ。なんていうか、絶対に失敗したくないんだ。妹は何歳なの?」
「25だな」
「そのくらいの子は夢の国だと喜ぶの?」
「絶対にな。パレード見てもいいし、乗り物も乗れる。食べ物も買い物もできる。時間はあっという間に過ぎるから時間を持て余すこともないだろ。俺も妹を連れて行きたいけど時間がなくてさ。金曜に買い物に連れて行く約束だけ取り付けたんだ。なんでも買ってやるのにあいつは何もいらないって断るんだよ。謙虚な妹なんだ」
健介は妹のこととなると兄バカになる。
妹はどうやらまともらしいのでそんな兄をいなして上手く扱っているらしい。
いずれスーパードクターと呼ばれるであろうこの男をいなす妹をいつか見てみたいな、と心の中で苦笑いしながら思った。
「夢の国なんて考えても見なかったよ。ありがとな、健介」
「もし言ったらお土産頼むよ。クマのキャラクターのものを何かさ。妹が好きなんだ。」
「分かったよ」
明日からの休みがとても楽しみになってきた。
健介と軽く1杯飲み、食事をして帰ると時間は9時を過ぎていた。
夢の国を調べると俺も久しぶりに行きたいかもしれないと思った。
由那ちゃんにメッセージを送ってみた。
【遅くにごめん。明日明後日なら大丈夫なんだね。どこに行こうか考えたんだけど平日だから空いてそうだし夢の国に行かない?キキの散歩の後だから遅くなるけど道も混まないだろうしどう?】
なかなか返信がこなくて、俺は正直焦ったが気持ちを落ち着けてシャワーを浴びに行くと合間でメッセージが届いた音が聞こえた。
あまりにも気になり、洗うのもそこそこに一度バスルームから出てくるとやはり由那ちゃんからの返信だった。
夢の国にいきたい!と書いてありホッとした。
またバスルームに戻りシャワーを浴び直すが気持ちが舞い上がってしまう。
まるで高校男子みたいだな、と鏡を見ながら1人笑ってしまった。
驚いたことに夏休みが重なっていた。
それを聞いたら俺は由那ちゃんを誘わずにはいられず、考えるよりも先に誘っていた。
朝からちょっとだけ気持ちが上がっているのがわかる。
顔がつい綻んでしまう。
午前中外来の診察が終わるとすぐにオペに入った。
やっとのことで少し落ち着いたところでスマホを見ると由那ちゃんからのメッセージが届いていた。
明日明後日なら大丈夫、と。
どうしようかな。
どこに行こうかな。
ゴールデンウィークのこともあり、なんとなくあれから地元のこじんましたお店に行くことが多かった。
俺がなんてフォローしようとも、由那ちゃんにとっては俺の隣にいることで居心地の悪さを感じてしまったことは間違いない。
でも俺は由那ちゃんともっと過ごしたい。
だからこそ由那ちゃんがもう2度と居心地の悪さを感じずに素で自分を曝け出してくれるように努めていた。
明日明後日は出来れば近所でなくどこかに行きたい。
せっかくの夏休みを一緒に楽しく過ごしたい。
由那ちゃんのことはもうとっくに友達以上の気持ちになっている。
けれど前のように避けられないよう、慎重になってしまう。
由那ちゃんは控えめな子だから俺のことを知ったら逃げてしまうのではないかと思った。
俺がこの病院に医師で跡取りだと知ったら、と思うと気が重い。
いつまでも言わないわけには行かないが、なんとなく仕事も誤魔化したままでいる自分が辛くなってきた。
もっと俺のことを知ってほしいと思った。
反対に由那ちゃんのことをこれまで以上に知りたくなった。
明日、明後日のことを考えると楽しみになってきた。
でもどこに行こうかと悩んでしまう。
病棟の回診も終わり、帰り間際に同僚の健介と帰りが一緒になった。
一緒に夕飯を食べに行くことになり連れ立って近くの居酒屋へ向かった。
まだ来たばかりの健介だが年が同じこともありすぐに打ち解けることができた。
健介はアメリカの大学をでて、さらにはそのまま病院でも勤務をし技術を磨いてきた優秀な外科医。
ユーモアがあり、人の心を掴むのが上手い彼だがとてもパワフルでオペを何件もこなすほどの体力を持ち合わせており見習うべきところはたくさんあった。
ただ、周囲からは残念なお兄さんと呼ばれていた。
妹を溺愛してるらしく10年ぶりに日本に戻ったこともありわざわざ妹が働いているという理由だけでうちで働くことを決めたらしい。
妹は兄を邪険にしているらしいが、それにもめげず暇さえあれば仕事を見に行ってるらしい。
最近はそんな彼の行動も周囲からは温かい目で見られ黙認されているよう。
妹はそんなに可愛い存在なのか?
俺には弟しかいないからわからない。
「なぁ、明日から夏休みなんだけど……どこに行こうか悩んでるんだ」
「誰と行くんだよ」
「うん、まぁ。気になってる子、かな。ちょっと年下だけどしっかりしてる可愛い子だよ」
「羨ましいな。年下なら定番の遊園地とかどうだ?うちの妹なら夢の国なら間違いなく喜ぶな。まだ暑いし水族館とかもいいかもしれないな」
「なるほどな」
「冬哉、お前モテるんだから悩むことはないだろ。30までデートなんてたくさんしてきただろ」
「うーん。ま、そこそこは。でも今回は違うんだ。なんていうか、絶対に失敗したくないんだ。妹は何歳なの?」
「25だな」
「そのくらいの子は夢の国だと喜ぶの?」
「絶対にな。パレード見てもいいし、乗り物も乗れる。食べ物も買い物もできる。時間はあっという間に過ぎるから時間を持て余すこともないだろ。俺も妹を連れて行きたいけど時間がなくてさ。金曜に買い物に連れて行く約束だけ取り付けたんだ。なんでも買ってやるのにあいつは何もいらないって断るんだよ。謙虚な妹なんだ」
健介は妹のこととなると兄バカになる。
妹はどうやらまともらしいのでそんな兄をいなして上手く扱っているらしい。
いずれスーパードクターと呼ばれるであろうこの男をいなす妹をいつか見てみたいな、と心の中で苦笑いしながら思った。
「夢の国なんて考えても見なかったよ。ありがとな、健介」
「もし言ったらお土産頼むよ。クマのキャラクターのものを何かさ。妹が好きなんだ。」
「分かったよ」
明日からの休みがとても楽しみになってきた。
健介と軽く1杯飲み、食事をして帰ると時間は9時を過ぎていた。
夢の国を調べると俺も久しぶりに行きたいかもしれないと思った。
由那ちゃんにメッセージを送ってみた。
【遅くにごめん。明日明後日なら大丈夫なんだね。どこに行こうか考えたんだけど平日だから空いてそうだし夢の国に行かない?キキの散歩の後だから遅くなるけど道も混まないだろうしどう?】
なかなか返信がこなくて、俺は正直焦ったが気持ちを落ち着けてシャワーを浴びに行くと合間でメッセージが届いた音が聞こえた。
あまりにも気になり、洗うのもそこそこに一度バスルームから出てくるとやはり由那ちゃんからの返信だった。
夢の国にいきたい!と書いてありホッとした。
またバスルームに戻りシャワーを浴び直すが気持ちが舞い上がってしまう。
まるで高校男子みたいだな、と鏡を見ながら1人笑ってしまった。