一途な外科医は彼女の手を繋ぎ止めたい
買い物を終えると車に乗り自宅へ帰るが、今日がもう終わってしまうと思うと胸の奥がキュッと締め付けられる。

「由那ちゃんは明日も暇なんだよな?明日も一緒に出かけてくれないかな?2日連続はダメ?」

「ダメじゃないです。でも冬哉さんの貴重な夏休みを私とでいいのかなって……」

先細る声でそういうと、被せるように冬哉さんが声を上げた。

「由那ちゃんと楽しみたいんだ!」

ハッキリと言われ、顔がほてるのを感じた。
暗い車内で冬哉さんに見えなくて良かった。
今私がどんな顔してるか見られたら、冬哉さんはもう私とは友人でいられないって思われそうなほどに赤くなっているだろう。私の恋心に気付かれてしまうだろう。
今の関係を壊したくない。

私は深く息を吸い、心を落ち着けた。
何事もなかったように冬哉さんのお誘いに答えた。

「明日もお出かけなんて楽しみ!」

「よかった。明日はどうしようか。今日たくさん遊んだから疲れてるよな?キキを連れて川にでも行かない?」

「キキも車に乗っていいんですか?汚しちゃうかもしれないから申し訳ないしキキはお留守番にしますよ」

この凄いエンブレムがついた車に犬が乗るなんてもってのほかだ。
私でさえ足を踏み入れるのを躊躇うほどの車なのに。

「もしかして遠慮してる?俺はキキが大好きだし、車は使うためにある。そもそも使えてもいないんだから気にすることはないよ」

「でも……」

「俺がキキのことが好きだから誘いたいんだよ。もしキキが汚しても俺は全然気にしない」

そこまで言われてしまうと断りきれない。

「すみません。よろしくお願いします」

「よろしくお願いされます」

そういうと笑ってしまった。
冬哉さんのユーモアに和まされた。
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