想い出は珈琲の薫りとともに
ゆったりと歩きながら薫さんはこちらに向かってくる。その姿を見ると、早く歩けないのも仕方ないと思う。まもなく四歳になる息子の緋彩がパパの腕にしがみついているからだ。
「ひーくん、またパパに抱っこしてっておねだりしてたんだよ? 本当に甘えん坊なんだから!」
その風香の話ぶりは自分の口調に似てきたなとつい笑ってしまう。
「ひーはパパが好きだからいいの!」
風香も小さい頃パパっ子だったが、弟も負けじとパパが好きだ。平日は、忙しいパパとなかなか会えないのが寂しいらしく、今日のような休日はいつもべったりと甘えている。
「ママ、ご飯の用意手伝って欲しいな?」
まだ降りようとしない緋彩に呼びかけると、目を輝かせ「する!」と足をバタバタさせていた。
土曜日の朝はいつも店で朝食をとるのが習慣になっている。
ベーコンエッグにサラダにトースト。そんな簡単な食事。けれど一つだけ、ここでしか味わえないものがある。
子どもたちも手伝ってくれた食事が並ぶと最後の仕上げにかかる。
グラインダーに豆をセットし挽いている間にフォームミルクを作る。少しだけ甘味を足したミルクは子どもたちのためだ。
薫さんのために淹れるのはマキアート。これを味わってもらうために、わざわざ店に来てもらっているのだ。
「風香、フワフワミルク好き!」
「ひーも!」
子どもたちはカップを持ってはしゃぎあっている。
薫さんはマキアートの入るカップにゆっくり口を付けていた。
「ねぇ、パパ」
向かいに座る風香が薫さんをしばらく眺めていたかと思うと呼びかけた。
「なんだい?」
薫さんが風香に穏やかに笑いかける。
「どうしていっつも、ママのコーヒー飲む時は嬉しそうなの?」
薫さんはその質問に、驚いたように目を開いてこちらを見た。そして、じっとパパを見つめる風香に向いた。
「この珈琲が、ママとの想い出の薫り、だからだよ」
そう言って薫さんは笑っていた。
〜想い出は珈琲の薫りとともに〜
fine
「ひーくん、またパパに抱っこしてっておねだりしてたんだよ? 本当に甘えん坊なんだから!」
その風香の話ぶりは自分の口調に似てきたなとつい笑ってしまう。
「ひーはパパが好きだからいいの!」
風香も小さい頃パパっ子だったが、弟も負けじとパパが好きだ。平日は、忙しいパパとなかなか会えないのが寂しいらしく、今日のような休日はいつもべったりと甘えている。
「ママ、ご飯の用意手伝って欲しいな?」
まだ降りようとしない緋彩に呼びかけると、目を輝かせ「する!」と足をバタバタさせていた。
土曜日の朝はいつも店で朝食をとるのが習慣になっている。
ベーコンエッグにサラダにトースト。そんな簡単な食事。けれど一つだけ、ここでしか味わえないものがある。
子どもたちも手伝ってくれた食事が並ぶと最後の仕上げにかかる。
グラインダーに豆をセットし挽いている間にフォームミルクを作る。少しだけ甘味を足したミルクは子どもたちのためだ。
薫さんのために淹れるのはマキアート。これを味わってもらうために、わざわざ店に来てもらっているのだ。
「風香、フワフワミルク好き!」
「ひーも!」
子どもたちはカップを持ってはしゃぎあっている。
薫さんはマキアートの入るカップにゆっくり口を付けていた。
「ねぇ、パパ」
向かいに座る風香が薫さんをしばらく眺めていたかと思うと呼びかけた。
「なんだい?」
薫さんが風香に穏やかに笑いかける。
「どうしていっつも、ママのコーヒー飲む時は嬉しそうなの?」
薫さんはその質問に、驚いたように目を開いてこちらを見た。そして、じっとパパを見つめる風香に向いた。
「この珈琲が、ママとの想い出の薫り、だからだよ」
そう言って薫さんは笑っていた。
〜想い出は珈琲の薫りとともに〜
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