冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 芽衣の思いやりに触れ、母親と正面から向き合う勇気をもらった俺は、彼女と一緒にいればきっと母の状況も改善する。そう信じて疑わなかった。

 芽衣の助言に従い、民間企業の運営する相談室を予約し、初めの数回は俺も同伴でカウンセリングを受けた。

 とりとめのない話をしながら少年時代の父の裏切りについて触れ、自然と母が話し手になったところで、『お母様も時々いらしてみませんか?』とカウンセラーがうまく誘導してくれた。

 母がひとりで相談室に通えるようになると、俺は肩の荷が下りたような気分になった。

 これで母の気持ちが安定すれば、芽衣のことも紹介できる。そして、いずれは結婚……。

 それまでは恋愛自体に消極的だったのに、芽衣と恋人同士になってからは、結婚して家庭を持ち、子どもを授かる未来までが自然と頭に思い浮かぶのだった。


 ――それなのに。

 幾望学園から帰宅した俺は、電気もつけず、リビングのソファにどさりと腰かける。

 もう一度芽衣からの手紙を読み返そうかと思ったが、封筒を見ただけでやり切れない思いがこみ上げ、結局中身は出さなかった。

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