冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

「だっこしてほしい」
「今? いいけど」

 両手を広げて成優を抱き上げようとすると、成優は抵抗して首をぶんぶん横に振った。そして、また小声で言う。

「ちがう。……パパに」

 子どもなりに遠慮しているのだろう。ちらちらと至さんを窺いながらも素直に抱っこを頼めない成優がいじらしい。

「ママがお願いしてみようか?」

 そう尋ねると、成優は少し考えた素振りをしてから一歩至さんに近づく。それからすうっと息を吸って言った。

「パパ」
「うん?」
「……だっこ」

 モジモジしながらもそう言った成優に、至さんはくしゃっと相好を崩す。

「いいよ。おいで」

 その場にしゃがんで両手を広げた至さんに、成優がギュッと抱きつく。至さんが立ち上がると、成優は楽しげに「きゃははっ」と声を上げた。背の高い彼の抱っこは、迫力があるのだろう。

「成優、うれしい?」
「うん!」

 至さんの問いに、満面の笑みで頷く成優。憧れのお兄さんが父親だと言う事実にショックを受けるのではとも思ったけれど、素直に受け入れて喜んでくれた成優にホッとした。

< 155 / 223 >

この作品をシェア

pagetop