冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
『きみは知らなくていいことだ』
『知らなくていいって……私、あなたの妻よ?』
『わかっている。しかし、良き妻というのは、余計な詮索をしないものだ。きみは日々の家事をこなし、至をまともな大人に育てればいい。簡単だろう、至は私に似て優秀な息子なんだから』
煩わしそうに吐き捨て、風呂場へと消えていく父。
当時の父は上場企業の役員に昇進したばかり。多忙なのは理解するにしても、その身勝手な言い分には憤りしか覚えなかった。
俺の学校での成績にも興味がないし、家で勉強を見てくれたこともないくせに、俺のことを〝自分に似て優秀〟だという傲慢さも許せない。
ふと母を見下ろすと、冷たいフローリングの床に座り込み、感情のない瞳で宙を見ている。
子どもながらその表情に危ういものを感じ、俺は階段を下りて母に駆け寄った。
『なぁ母さん、アイツの浮気をちゃんと調べて、慰謝料をもらって離婚するべきだよ。これ以上一緒に暮らしていたら、母さんが壊れる』