冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 ひと息に話したはいいものの後半は自信がなくなってきて、最後は声が小さくなった。

 弁護士として忙しい郡司さんにとって、カウンセリングに同行するだけでも大変なことだろう。お母様の反応も私が勝手に予想しただけ。もしも拒否されたら、郡司さんにまた心労を与えてしまうことになる。

 ぐるぐる考えていると、郡司さんはグラスを置き、テーブルに肘をついて私をジッと見つめた。

 薄暗い照明の中でも彼の漆黒の双眸は美しく、吸い込まれそうな感覚に陥る。

「いい考えだ」
「えっ……?」
「ありがとう。今日会ったばかりの男の情けない相談に耳を傾けてくれるどころか、有用性のあるコンサルテーションまで。これは料金を払わなきゃいけないな」

 彼の目が優しく弧を描き、どきりと胸が跳ねる。思わずパッと目を逸らし、ウイスキーに口をつけアルコールで自分をごまかす。

「いえ、そんな。元々私がご家族のことに首を突っ込んだから、その責任を取ったまでで」
「あんな冗談を真に受けていたのか。単に俺がきみとふたりで話したかっただけなのに」

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