冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~

 その時、コンコン、とカウンセリング室のドアがノックされる。事前に進路についての相談の予約をしていた、三年の女子生徒だろう。

 カウンセリング室についての基本情報や利用方法について、PTA会長が改めてアナウンスしてくれたおかげもあり、この部屋の利用者は日々増えている。

 悩める生徒の進路を私が代わりに決めてあげるわけにはいかないが、一緒に悩むことはできる。それが少しでも救いになると信じて、私は「どうぞ」と穏やかに返事をした。


「芽衣、体調は大丈夫か?」

 その日、夜七時頃帰宅した至さんは、キッチンに立つ私を見るなりそう言った。私の妊娠が発覚してからの彼は、毎日のように私の体を心配し、ちょっと過保護なくらいだ。

「変わりありません。至さんも、お仕事は順調でしたか?」
「ああ。……しかし、芽衣にとってはあまりうれしくないかもしれない報告がある」
「うれしくない報告?」

 しかも、〝かもしれない〟とはどういう意味だろう。

 料理の手を止めて彼を見ると、至さんはばつが悪そうに笑う。

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