冷徹弁護士、パパになる~別れたはずが、極上愛で娶られました~
「あっ! ママだ!」
砂場にいた成優が私の姿に気づき、道路に面した柵まで近づいてくる。担任の先生もすぐに気が付いて、不思議そうな顔で歩み寄ってきた。
「こんにちは~、観月さん。成優ちゃん、今日は早いお迎えでしたっけ?」
「いえ、ちょっと職場でイレギュラーな事態が発生しまして……。今、園長先生とお話ってできますでしょうか?」
「ええ、大丈夫だと思います。中にどうぞ」
私が園の玄関に回ると、先ほどの先生から事情を聞いたらしい園長が出迎えてくれた。
「こんにちは、成優ちゃんのお母さん。お仕事でなにかトラブルですって?」
六十代の園長は、真っ赤なフレームの眼鏡とおかっぱ頭がトレードマーク。
子どもたちだけでなく保護者にもいつも優しい言葉をかけてくれる、菩薩のような人だ。
「そうなんです。お忙しいところすみません」
「いいのよ。さ、園長室へどうぞ」
園長室に通され、部屋の中央の応接セットで園長と向き合うと、私はありのままの事実を伝えた。
現在、勤務先の学校で男子生徒と噂になっていること。自宅謹慎の処分を言い渡さされたこと。もし噂が大ごとになったら、保育園にも迷惑をかけてしまうかもしれないこと……。