記憶喪失の妻は一途な夫(外科医)に溺愛される
誰かの立てる物音が心地よい・・・。
もう少し聞いていたいと思いながらも、その音の聞こえる方に惹きつけられてゆっくりと瞳を開ける。

するとすぐに、足音が私の方に近づいてくる・・・。

優しく温かなぬくもりが私の髪や頬を撫でる。

「おはよう」

記憶が戻ったわけじゃないとすぐにわかる。
私の心の奥で、ぼんやりとしている部分がはっきりとまだ存在していることがわかって、少しがっかりしながらも、それ以上に、そのぼんやりとしている部分から湧き上がる感情に自分でも驚く。

今まで、誰かと付き合ったことがないわけじゃない。

誰かに片想いしたことだってある。
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