一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 しかも、この重い体を運ばせてしまった。

「ホテルでの一夜は、なかなか情熱的だった」
「えっ!? なにもなかっ……」

 私の唇に、リセの指が触れ、あの日を思い出させるような笑顔がとどめとなって、私を黙らせた。

「ホテル? 情熱的? まさか、結婚前に遊んでおこうと思って、浮気をしたのか!」

 啓雅さんが顔を赤くして、私をにらみつけた。

「浮気? 望んで結婚するならわかるが、これは琉永の望みじゃない」

 私の前に置かれた契約書を手に取り、さっと眺めると、一笑し、ビリビリと破いて啓雅さんの頭の上に降らせた。

「なにをする! お前、俺が誰だと思ってっ……!」
「お前? 俺にそんな口をきいていいのか?」
 
 啓雅さんはハッとして、サングラスをはずした後のリセの顔を見る。
 黙った啓雅さんを見て、リセは悪い顔で微笑み、店内にいたスタッフを呼び、耳打ちする。
 各テーブルに、ワインと店のおすすめ料理を少しずつ盛り合わせたアントレが提供された。
 リセは店内に向けて、軽くお辞儀をし、雰囲気は落ち着いたものに戻る。 
 そして、私の頭を『もう大丈夫だから』というように、優しくなでた。
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