一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 たった一枚の紙切れで、恋も夢も失うなんて、絶対に嫌だ。

「清中繊維がどうなってもいいのか!」

 啓雅さんの怒鳴り声が響き、店内のお客が嫌そうな顔をした。
 サービスを担当する店内のスタッフが、険しい顔をして、こちらのテーブルへ近寄りかけた瞬間――爽やかな香りが漂い、全員の視線を一瞬で奪った。

「若い女性を恫喝(どうかつ)ですか? 乾井(いぬい)専務?」

 長身で高級なスーツ姿、かけていたサングラスを胸ポケットへひっかけて、ささやくような声で、その人は私たちのテーブルのそばに立つ。
 
 ――私は夢の続きをみているのだろうか。

 彼から漂う私と同じ香りが、頭をはっきりさせた。

「リセ……!? どうして、リセがここに?」
琉永(るな)のお見合い相手を調査させていた。調査員が危険な雰囲気を察して、俺に連絡してきたというわけだ」

 どうやら、啓雅さんはリセが雇った人に、後をつけられていたらしい。

「あれだけ愚痴ったら、どんな相手なのか気になるのが普通だ」
「その節は、すみませんでした……」

 酔っぱらってリセに絡んだ記憶がしっかり残っている。
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