一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 昨日、私が啓雅(けいが)さんの提示した契約書を拒み、サインをしなかった。
 それもあって、二人の私への怒りは凄まじいものだと想像できた。

「……ご迷惑をおかけしてすみません。出勤前に寄らせていただきます」

 父と継母は、病院の支払いに困った私が、啓雅さんと結婚すると思っているに違いない。

 ――千歳にひどいことはいわない。千歳は私を利用するために必要だから、大事な人質だ。

Fill(フィル)』の事務所に電話をかけた。

「おはようございます。清中ですけど……」
『おっはよーん!どうしたの?琉永ちゃん!』

 なぜこんな時に紡生(つむぎ)さんが出てしまったのか。
 できたら、恩未(めぐみ)さんがよかった。

「えーと、朝早いですね。恩未さんはいますか?」
『いるけど、今は忙しい!』

 どうして、あなたはヒマなんですかと聞きたかったけど、その言葉を呑み込んだ。

「妹の病院に寄ってから出勤するので遅刻します。遅刻した分は、残業するので、よろしくお願いします」
『いいよ。千歳ちゃん、発作が起きたの?』
「いいえ、その……」
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