一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 これでオーダーが、と言いたいところだけど、今の『Fill(フィル)』はオートクチュールにまで手を回せる余力はなかった。
 ショーが終わってから、売り上げが急激に伸び、麻王グループのアパレル部門では、『Lorelei(ローレライ)』に次ぐ、第二位のブランドにまでのし上がっていた。
 突然、理世が私の額にキスをした。

「り、理世!?」
琉永(るな)。仕事の顔になってるぞ」
「ドレスがすごすぎて、つい……」 

 ホテルのチャペルが、日の光を多く取り入れる作りだったこともあり、銀の刺繍が映え、光を反射して輝いている。
 これも計算済みなら、紡生さんは本当にすごい。

「ドレスのことを考える余裕は、そろそろなくなるけどな?」
「わかってます。理世の妻として、しっかりしなきゃ!」

 披露宴のお色直しは二回だけ。
 なぜなら、この結婚式は私のお披露目でもあり、親戚への挨拶がメイン。
 ウェディングドレスに似せたミディアム丈のオートクチュールドレスを着た。
 ここからが本番――招待客への挨拶をし、理世の妻として振る舞う。
 緊張気味に麻王家の親族が座るテーブルへ近づく。
< 251 / 260 >

この作品をシェア

pagetop